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日時:令和5年8月6日(日)
場所:神戸市総合教育センター【兵庫県神戸市中央区東川崎町1-3-2】
日本生徒指導学会副会長 関西地区研究会会長 新井 肇
夏休みも折り返しとなり、暑い中、大勢の方に御参加いただき有り難うございます。
生徒指導提要が昨年12月に改訂され公刊されました。子どもたちが元気になるように、提要改訂の趣旨を生かし、学校現場や教育行政の中で活用していただきたいと考えています。
本日の大会も「関西初、元気の出る生徒指導」と題して、生徒指導提要の考え方に裏づけられながら「させる生徒指導から支える生徒指導」への転換を目指し、具体的にどうすればよいのか、不登校対策をどのようにしていくのかなど、本日の様々な分科会・自由発表から活発な議論をしていただき、知恵と力を合わせて解決のきっかけとなるような実りある一日となることを願っています。
神戸市教育委員会事務局 学校教育部 部長 小菅康生
お暑い中、ようこそ神戸へお越しくださいました。ここにお集まりの皆様におかれましては、それぞれのお立場で、都道府県の生徒指導を支えていらっしゃることから、いろいろなことを、このあとの討議議論の中から学ばせていただきたいと思います。
生徒指導提要が改訂され、本市においてもいろいろな取組を進めているところです。先日、神戸市の教育長が会見をさせていただいたところですが、7月には不登校支援の充実にむけた基本方針を神戸市として策定しました。その中の考え方としては、生徒指導提要を基に、照らし合わせながら、登校の有無だけを目標とするのではなく、生徒の意思を尊重して支援することを基本的な考え方としています。今後、不登校特例校の設置、不登校支援センター、オンラインの相談窓口、ICTを活用したつながりの場支援など、様々な取組を予定しています。本日の大会で皆様からの学びやご意見をいただきながら不登校の支援につなげていきたいと考えています。
奈良女子大学教授 伊藤 美奈子
近年、不登校児童生徒数が増加しており、その要因は人によってさまざまである。私たちは、教育機会確保法にも示された「不登校というだけで問題とはみなさない」という視点をしっかりと持ち、学校復帰のみに固執することなく、子どもたちの社会的自立をめざしていかなければならない。そのために学校ができる手立ては、子どもたちに多様な学びの機会を保障していくことである。この子にとっての社会的自立の一歩目は何か(どこか)ということを常に考えながら支援を行っていくことが必要である。ただし、つないで終わりではなく、学校と専門機関とが一緒になって支援を継続していくこと、特に学校は不登校児童生徒に対してできる支援を手と心を尽くして考えていくことが重要である。そうした、これからの不登校支援のあり方について、さまざまな点から考えていく。
ファシリテーター: 日本生徒指導学会関西地区研究会 会長 新井 肇
立場の異なる3名のシンポジストが、「これからの不登校児童生徒支援の方向性と課題」について、基調講演および、別室教室支援、各校の特色ある取組による話題提供を行う。
大阪市立新北島中学校 教諭 笠谷 和弘
大阪市教育委員会は、平成25年度に全小中高等学校に向けて、指針「体罰・暴力を許さない開かれた学校づくりのために」を示した。この指針の主旨は、これまでの生活指導の大転換と受け止めることができる。教員による体罰の禁止のみならず、最終章では有形力を用いることのない新たな生活指導体制の構築として「段階的指導」の導入に言及している。
これを機に大阪市教育委員会において、「大阪市独自の段階的指導」策定に向けての検討協議が継続的に実施され、平成30年度より大阪市立小中学校「学校安心ルール(スタンダードモデル)」として、全小中学校420校での一斉導入に至った。
学校安心ルールのコンセプト・特徴を解説するとともに、小中学校でどのように活用されているのかを発表する。
東大阪市立若江小学校 教頭 入口 浩樹
同 首席 齋藤 千佳
全員が揃う日をめざして、2年前から本校で取り組んでいる不登校等対応について発表する。
個性や保護者、信頼度、チーム体制、課題などからアセスメントし、解決の糸口を教員のアプローチによって掴み、復帰に至った10名中の6名と取組中の2名の事例をもとに、ターニングポイントとともに子どもたちの物語の軌跡を追う。
アプローチはかかわる教員の強みによって変わる。自分ならどうするか、かける言葉はどんな言葉か、どんな行動をするか、チームにはどんな働きかけをしてほしいかなど、ワークシートを用いたワークを取り入れながら、進めていく。
和歌山県教育庁学校教育局教育支援課 指導主事 吉見 昂志
同 指導主事 小池 亨
令和5年6月4日に開催した和歌山県中学生熟議(県内の中学生が集い、テーマに沿って熟慮・議論を行う取組)の取組が、発達支持的生徒指導として有効な取組であったことが発表された。今年度は「南海トラフ地震に備えて、中学生ができること」をテーマに4年ぶりの対面形式で行われ、47名の中学生が参加したということで、熟議当日の様子や熟議の開催2日前に大雨災害が和歌山県を襲い、被災直後の開催となったことなどが紹介された。また、熟議の取組だけでなく、防災教育についても期待される効果が発達支持的生徒指導と共通することを挙げ、生徒指導の重層的支援構造を防災教育に置き換え、平時の備えや未然防止の取組、災害時の取組について説明された。最後に、熟議に参加した中学生の感想から、主体的に考え、他者の意見を交えていく中で、気づきや感じ得た内容が紹介された。熟議の取組が、主体的・対話的で深い学びを実現し、自己有用感の育成や共感的な人間関係の構築などに有効であったと発表された。
摂南大学 西村 晃一
文部科学省(2022)によるといじめの認知件数と暴力行為の発生件数は前年度に比べて大幅に増加している。問題行動を抑制する要因について、桜井(1986)は、共感性の重要性を挙げている。そこで本研究では、共感性と学校生活スキルとの関連性について検討した。
調査対象と内容:A県の公立中学校に在籍する1~3年生526名。
(1)学校スキル尺度短縮版(五十嵐,2011)
(2)子ども用認知・感情共感性尺度(村上・西村・櫻井,2014)
学校生活スキルを独立変数、認知・感情共感性の各下位尺度を従属変数とする重回帰分析を行った結果、「進路決定スキル」と「集団活動スキル」において、すべての認知・感情共感性と関連が認められた。集団活動スキルを高めることで、共感性の向上に寄与するか考察する。
兵庫県教育委員会事務局義務教育課 主任指導主事兼主幹 大道 基伸
同 指導主事 酒井 亮
1 兵庫県の不登校児童生徒の状況
・平成27年度から小中学校ともに7年連続で増加。
・各学校には、一定程度のストレスを抱える児童生徒がいることが独自調査で判明。
2 これまでの兵庫県の取組
・SC配置(小:134、中:全校)
SSW配置(166中学校区)
・ひょうごっ子悩み相談、SNS悩み相談(通年:R元~)
・ひょうご不登校対策事業(R2年~)
3 ひょうご不登校対策プロジェクト
・県、市町、関係機関、学校等が全県で一丸となり、不登校児童生徒支援を推進する体制を構築し、不登校対策を総合的に実施。(R5~)
滋賀県守山市立河西小学校 主幹教諭 大島 淳史
滋賀県教育委員会事務局幼小中教育課 生徒指導・いじめ対策支援室 指導主事 竹中 裕貴
1.令和4年度の取組について(大島主幹教諭)
(1)不登校対策研究会議の開催について
(2)教員向け不登校に係るリーフレットの作成
(3)リーフレットの活用事例:河西小学校での実践事例
2.令和5年度の取組について(竹中指導主事)
(1)不登校対策連絡協議会の開催
(2)教員向け不登校リーフレットを活用した各種研修会の実施について
(3)リーフレットを使った模擬研修
3.滋賀県の今後の取組について(竹中指導主事)
滋賀県不登校対策庁内会議の開催、総合教育会議で不登校について議論を進める。
奈良県立教育研究所教育支援部生徒指導係 係長 隅岡 寛延
奈良県立教育研究所教育支援部生徒指導係 指導主事 鶴原 龍弘
大阪教育大学 教授 戸田 有一
奈良県のいじめ認知件数は、すべての校種において全国平均を上回っている。学校では、軽微ないじめの芽もいじめとして認知し、早期発見・早期対応に努めている。しかし、いじめ被害に苦しむ児童生徒が多くいることも事実である。そのような児童生徒を一人でも少なくするため、いじめの兆候を早期に捉え、迅速に情報共有することで、スピード感のあるより適切な組織的対応を行う奈良県いじめ防止プラットフォーム の「気付き見守りアプリ」について発表する。
大阪府教育庁 市町村教育室 小中学校課 生徒指導グループ 首席指導主事 中野 悟志
同 指導主事 勝谷 実嗣
大阪府公立学校スクールカウンセラー スーパーバイザー 巽 葉子
大阪府教育委員会スクールソーシャルワーカー スーパーバイザー 黒田 尚美
改定された提要に「チーム学校」の一員であるスクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)等との連携、多角的なアセスメントの重要性が説かれている。では、どの場面でどのように専門家と連携すべきか。これまで困難課題の支援に数々当たってきたSCスーパーバイザー、SSWスーパーバイザーの具体的な活動を紹介しながら、大阪府が進めてきた専門家多職種連携と、今後の在り方についてお伝えする。