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日 時:平成29年8月11日(金)
場 所:京都教育大学【京都市伏見区深草藤森町1】
シンポジスト | 鳴門教育大学 | 森田 洋司 (日本生徒指導学会関西地区研究会名誉会長) |
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関西外国語大学 | 新井 肇 (日本生徒指導学会関西地区研究会会長) | |
大津市教育委員会 | 桶谷 守 (日本生徒指導学会関西地区研究会副会長) | |
指定討論者 | 京都光華女子大学 副学長 | 若井 彌一 |
企画・司会 | 京都教育大学 | 岡田 敏之 |
子どもたちのいのちをいかにして守っていくか、いのちの大切さをどのように学ばせていくのか、学校におけるリスクマネジメントをどのように行っていくのか、子どもたちが毎日安心して通学し、いきいきと学校生活を送れる学校をどのようにつくっていくのかについて考えました。新井先生からは「学校における自殺予防の進め方」について、桶谷先生からは「学校現場の事例から見えてきた、いじめ防止のための取組」について、森田先生からは「国の『いじめ防止等のための基本方針』改定に基づく、学校のリスクマネジメントの在り方」について話されました。そして、若井先生には法律の視点から、いじめ等の教育課題についてお話しいただきました。学校現場では、同僚性・協働性を高め、組織的に子どもの想いを受け止める体制づくりが必要であり、また、子どもたちの安全・安心な環境づくりのために、教師一人ひとりが心と技を磨くことが求められていると感じました。
京都府総合教育センター 教育相談部長 | 山本 雅哉 |
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京都府ではここ数年、不登校をはじめとする学校不適応の低年齢化の傾向がみられる。よって、未然防止のために思春期の前段階の「前思春期」に焦点をあて、この時期の発達的な特徴を整理し、教師の関わりについて調査研究を進めている。その研究成果の波及のために小学校3・4年生の担任を対象とした研修講座を開いたり、府内全教職員にリーフレットを配布したりしているとの報告があった。
藍野高等学校 教諭 | 中間 茂治 |
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LGBTQで悩んでいる生徒たちは親や生徒に相談できずに偏見で見られ、いじめられたり、また自分のことを自責したりして自傷行為に及んでいる生徒が多い。大阪府内の中高生にとったアンケートからは、女性より男性がLGBTQに対する受け入れにくさがある。教育現場は、上級学校に行くほど男性教員が増え、管理職も男性が多い。教育現場から積極的に差別や偏見をなくしていくことが必要である。性別に関する悩みや差別、いじめ、偏見などを見抜けるには、教師の主観、直感、見抜く力を磨くことが大切であるとの報告があった。
奈良県東吉野村立東吉野中学校 教諭 | 今井 裕美 |
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学校としては小規模の学校で、幼い頃から固定化された人間関係の中でストレスを感じている生徒が少なくない。そこでストレスチェックシートを活用し、生徒の内在する心的傾向の実態を把握し、個々を知る指標とした。生徒に対しても、ストレスマネジメント教育の中心的なプログラムである心理教育やアサーショントレーニング、構成的グループ・エンカウンターを実施したという報告があった。
千葉県佐倉市立白銀小学校 講師 | 田中 祥平 |
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生徒指導は、各教科・領域をはじめ、学校における日常生活のあらゆる場面において、体系的・計画的に行われなければならないが、問題行動への対処療法的な指導に終始している場合も少なくない。組織的な生徒指導体制を展開し、開発的・予防的な生徒指導が行われるために、教職員間の同僚性・協働性の構築が求められる。その中で、校内研修「理想の学校」において、教職員全員で理想の学校について協議し、教員間の教育観や指導観の相互理解と教育目標や生徒指導方針の共有化を図ったと報告があった。
平成28年度事業報告、収支決算が了承され、平成29年度事業計画、収支予算案が了承しました。
滋賀県教育委員会事務局幼小中教育課生徒指導・いじめ対策支援室 主査 | 河地 誠 |
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滋賀県守山市立明富中学校 教諭 | 淺野 智子 |
滋賀県では児童生徒によるいじめ防止のための自主的・主体的な活動の充実を図り、自己有用感や絆を感じられる学校づくりを行っている。明富中学校では、生徒の主体性に重きを置き、話し合い活動を中心に学級活動を進めてきた。そのような中、全校生徒にアンケートをとり、生徒会でその分析を行い、その内容を取り込んだ、いじめ問題に関する劇の上演をした。また、禁止する言葉ではなく、希望の持てる言葉での人権宣言を作成したり、校歌を歌うようになるために生徒会がVTRを作成して呼びかけたりするなど、生徒主体で絆をつむぐ学校づくりを推進してきた。現在では、教職員はもとより、保護者や地域を巻き込んだ「チーム明富」として展開している。このような取組を多くの学校に広めるために、全県規模で市町代表生徒を集め「滋賀県いじめ問題生徒会サミット」を開催したと報告があった。
兵庫県教育委員会義務教育課 主任指導主事 | 西川 康一 |
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兵庫県立但馬やまびこの郷 副所長 | 吉岡 靖麿 |
川西市教育委員会生徒指導支援課 指導主事 | 中西 亮 |
兵庫県では、不登校支援の中核施設である県立但馬やまびこの郷が、不登校児童生徒の学校復帰に向けて、段階に応じて適切な支援策を講じるための基本的な手立てをまとめた「学校復帰支援ガイドライン」、学校・保護者・適応指導教室等の関係機関との連携の在り方等についてまとめた「適応指導教室運営ガイドプラン」を作成し、不登校支援についての指針を示してきた。
さらに、川西市では不登校の未然防止の取組として、教師による「居場所づくり」、生徒による「絆づくり」に重点を置き、新規の不登校の未然防止に向けた取組と検証を行った。その取組の中で、教育委員会が不登校児童生徒の経年変化について、継続と新規の不登校児童生徒数がわかるようにグラフを用いて「見える化」し、学校の特徴と傾向を分析し、次にとるべき戦略を明確化するとともに、焦点を絞ったアプローチを行ってきた。その結果、新規の不登校児童生徒数が減少したと報告があった。
大阪市教育委員会事務局指導部 総括指導主事 | 福山 正樹 |
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同 指導主事 | 山内 伸作 |
同 指導主事 | 四坂 智和 |
大阪市の暴力行為が全国と比べ、小学校で1.9倍、中学校で3.1倍となっており、大阪市の教育振興基本計画では最重要目標として「子どもが安心して成長できる安全な社会の実現」が掲げられている。
大阪市では「児童生徒の問題行動に関する指針」に「①加害者の加害行為を早期に指摘し、本人の自覚を促し、保護者の協力を要請する。」「②問題行動等による被害者の被害の拡大を未然に防ぐ。」「③教員が適切な指導が行えない状態を避ける。」「④レベルによって対応の主体を学校から教育委員会、外部機関へと移行し、問題行動の改善を図っていく。」ことを意義とし、児童生徒の問題行動の発生時に学校として必要な対応について、5段階に分けて例示した。この指針に基づき、「学校安心ルール」を大阪市教育委員会が示し、それを基に、学校の実情に応じた「学校安心ルール」を作成し、保護者や児童生徒にあらかじめルールを明示することにより、子どもたちがしてはいけないことを自覚したうえで、自らを律することができるよう促すことを目的に運用していると報告があった。
大阪府教育庁市町村教育室小中学校課 主任指導主事 | 山田 智一 |
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同 主任指導主事 | 芳野 和宏 |
大阪府では平成24年度から4年連続暴力行為が全国ワースト1となっており、暴力行為の減少に向けて「生徒指導機能充実緊急支援事業」に平成27年度より取り組んでいる。まず、暴力行為について分析していくと、対教師暴力を繰り返し起こしてしまう児童生徒がいることがわかってきた。特に、対教師暴力を起こした場合に関係機関との連携をとった場合と、とらなかった場合を比較すると、関係機関との連携をとった場合は繰り返し率が50%、連携をとらなかった場合は85%であり、大きな差ができた。このことから、小学校ではチーム支援体制を構築する「小学校指導体制支援推進事業」を開始し、専門家であるSC、SSWや支援人材を学校の状況に応じて派遣している。中学校では、大阪府教育庁作成の「5つのレベルに応じた問題行動への対応チャート」を活用し、関係機関とも連携しながら、繰り返しの暴力行為の減少に努めた。それにより府内全体の暴力行為も減少傾向に転じている。本年度は「小中学校生徒指導体制推進事業」に統合し、小中連携を深め、更なる生徒指導体制の充実に取り組んでいると報告があった。