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日 時:平成28年8月6日(土)
場 所:同志社大学 今出川キャンパス至誠館【京都市上京区今出川通り烏丸東入】
ファシリテーター:兵庫教育大学大学院 新井 肇 教授
我が国の学校教育を支えてきた伝統的な理念は、学校における児童生徒の生活と学習の場を統合的に捉え、生活の場に学習基盤を整える過程で、各学校の教育目標を達成するとともに児童生徒個々の全人的な成長を目指すものです。また今日、「論点整理」(中教審教育課程企画特別部会)等を基にした次期学習指導要領が検討されている最中でもあります。そこで次期学習指導要領との関連も踏まえ、学業指導の教育的な意義は、我が国学校教育の理念実現に大きく寄与するものであり、学校教育の抱える今日的な課題解決に有効であることを確認し、明日からの教育実践に生かせる方向性について提案がなされました。
授業と生徒指導の一体化をめざした2名の先生方(兵庫県、大阪府)の実践について報告していただきました。その後、講演者、報告者とフロアーの皆様を交えて、授業と生徒指導の一体化をめざすための課題と方向性について意見交換を行いました。
上郡中学校は、学力の2極化ならびに男女の学力差が大きくなりつつある現状があります。そこで、授業がわからず、無気力になりつつある生徒に対して、職員の授業力向上、わかる授業の創造に取り組むことによって、学習意欲の向上や自己肯定感の育成、学級での良好な人間関係作りをめざしています。また、授業で学習規律の定着やグループ学習を積極的に取り入れていくことによって、孤立しがちな生徒や授業についていけなくなっている生徒を支える、温かい学級集団づくりに取り組んでいます。その根幹は、職員集団の意識向上であるとの報告がありました。
住道中学校では、落ち着いた環境のもと、子どもたちが伸び伸びと自分の良さを発揮できる学校をめざし、生徒指導上の課題への丁寧な対応とともに、学校行事・生徒会活動・部活動等をとおして生徒の主体性、自主性を伸ばす取組を進めてきました。特に、授業において学び合いのできる人間関係の形成に力を入れ、研究を重ねてきました。授業の中で、お互いを認め合い、高め合いながら学んでいくために、これまで培ってきたことについて報告がありました。
平成27年度事業報告、収支決算が了承され、平成28年度事業計画、収支予算案が了承され、確定しました。
定時制生徒の自己有用感を育むためには、他者に対して貢献し、承認される体験を得ることができるボランティア活動が効果的であるという仮説のもと、1年生全生徒を対象とするボランティア活動の取り組みを行いました。当初、定時制生徒の自己有用感を育むためには、地域の人に貢献し、活動が承認されることが重要であると考えていましたが、活動後のふりかえりシートや生徒への聴き取りからは、作業に重点をおいたボランティア活動よりも、生徒にとって身近な存在である地域の人、特に幼稚園児や保育園児といった子どもと交流を図ることを目的とする活動の方が、定時制生徒の自己有用感を育むために、効果的に機能したとの報告がありました。
今後は、自己有用感の定着を図るため、生徒が継続的にボランティア活動や交流活動を行うことの必要性が示唆されました。
生徒指導の三機能(共感的な人間関係を育む・自己存在感のある場をつくる・自己決定の機会を与える)とピア・メディエーション(仲間調停)の考え方を授業の中で取り入れることで、以下のような成果を見ることができました。
①子どもの発言が増える。②アイデアを出す子どもが増える。③子どもが優しくなる。④子どもとの信頼関係を築くことができる。(時間の無い中で時間をかけられるようになる。)⑤教師の指導的態度が援助的態度に変わる。⑥子どもの外面より内面を引き出そうとするようになる。
子どもが変わってくることはもちろん、教師の子どもに対する関わり方や子どもの見方が変わってくることは、大きな成果として挙げておきたいと思います。つまり、子どもも教師もお互いに尊重し合う態度が生徒指導をしていく上で必要であることに気づきました。また、授業の中で生徒指導の三機能を生かすことで、主体的に授業に臨むことができ、教科等すべての授業の基盤として有効に働いていることが実感できました。特に、学力や人間関係に不安を抱く子ども、自尊感情の低い子どもに顕著な変化を感じたとの報告がありました。
不登校児童A子と学級不適応児童B子の姉妹。とじこもりから抜け出し、登校を目指していた姉のA子、不登校に陥る寸前だった妹B子。姉妹を救ったのは、学校が行った様々な取組と支援体制でした。姉妹が別室登校(学級以外の部屋への登校)に至る経緯とともに、学校が行った物的支援・質的支援について実践報告を行い、今、教師に求められている不登校対応を、生徒指導係の立場から再確認する内容の報告がありました。この取組を通して、①保護者との協働体制構築が不登校解消・別室登校開始の原動力となること。②保護者援助をする際には、カウンセリング的側面とコンサルテーション的側面の両立が必要であること。③A子の教室復帰に向けた,更なる方策の検討が必要であること等、取組の成果と課題について報告がありました。
昨年10月、京都市内の高校生が大麻取締法違反で逮捕・検挙されるという重大な事案が発生しました。また、逮捕・検挙された生徒以外にも、大麻の吸引に関わって多くの高校生が警察で事情聴取を受けたという報道もありました。さらに昨年11月、京都市内の小学生が大麻を吸引して補導される事案や、今年3月、中学生、高校生ら少年3名が大麻取締法違反で逮捕されるという事案も発生しました。一連の事案から、大麻の吸引や所持の拡大と低年齢化が依然としてとどまらず、大変深刻な事態が今も続いている状況がうかがわれます。
京都府警察本部が行った「違法薬物」に関するアンケート(調査対象者:高校生約8000人、調査期間:平成27年11月~12月)結果は、以下の通りでした。
このような実態を踏まえ、違法薬物の乱用については、どの学校でもどの地域でも起こりうるという強い危機意識を持ち、その根絶に向けた取組を一層強化する必要があるとの報告がありました。
本校では、あらゆる生徒に対応するため、生徒指導部内に「いじめ対策委員会」「特別支援委員会」「人権係」「道徳係」「教育相談係」を配置しています。生徒本人に対する指導はもとより、家庭、地域に一歩踏み込んだ生徒指導を実践するため、関係機関との連携を積極的に取り組み、「高1クライシス予防」「中退者防止」に努めました。余儀なく進路変更をする生徒に対しても、早期から外部機関との連携を実施し、本校を離れた後も、関わりを持ち続けるように努めています。
また、ここ数年、発達に課題をもつ生徒の入学も多く、専門性に乏しくその対応に追われ、困り果てているような状況も耳にすることが多くなってきました。その対応として「特別支援委員会」では、「中学校からの引継ぎ」「保護者からの学校生活支援シート」の活用により、入学式以前から保護者や外部機関、地域との連携を実施し、入学式当日から「積極的に生徒に関われる環境」を整え、「生徒の困り感除去」「不安除去」に努めています。
その結果、全職員の協力(職員の感度アップ・立番・各委員会・日頃の情報交換・指導の役割分担)と各種関係機関の連携により、生徒一人一人に対する教育が実践され、問題行動を繰り返す生徒の減少、不登校防止、困っている生徒の困り感除去、引きこもり対策につながったとの報告がありました。
ネットいじめ等の問題行動は、教職員から大変見えづらく、教職員が問題行動を認知した段階では、既に重篤な事態に陥っていることもあります。すべての教職員がSNS等について十分な知識があるとは言えず、迅速かつ適切な対応をとれない場合もあります。
そこで、昨年度、SNS等の正しい使い方を子どもたちに理解させるとともに、「どの教員が授業を行っても、同じようにできる。」ことをコンセプトに、県青少年・男女共同参画課と県教育委員会が共同して教材を作成しました。
また、県教育委員会では、「自主・自律」「思いやり」「寛容」「規範意識」「郷土愛」等、当県の子どもたちに特に育みたい道徳性にしぼった道徳読み物資料集(小・中学校版)を作成し、平成26年2月に県内すべての公立小・中学校に配付しました。この中に、ネットいじめを扱った教材も掲載しているとの報告がありました。
平成26年度に「滋賀県不登校対策調査研究会議」を立ち上げ、9つの関係各課・部局(学校教育課、スポーツ健康課、学校支援課、人権教育課、生涯学習課、滋賀県総合教育センター、滋賀県心の教育相談センター、健康医療福祉部障害福祉課(精神保健福祉センター)、健康医療福祉部子ども・青少年局)が集い、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの協力も得ながら、不登校の実態を再考察し、課題を整理し、改めて不登校対策のあり方等について検討する機会をもちました。その1年目には、学校の先生方に対して「未然防止」「早期発見・早期対応」「登校に向けた支援」等、不登校への対策のポイントをリーフレット「不登校児童生徒への対応について」としてまとめ、啓発をしました。また、最終年度の2年目には「まとめ」の冊子を発行し、様々な研修等で啓発をしています。今回は、この2年間の取組について報告がありました。
生活指導サポートセンターでは、日常的に学校からの生活指導に関する相談窓口的役割を果たし、課題を抱える学校への訪問相談を実施し、状況の把握を図るとともに、学校内での課題に対しての共通理解を促し、生活指導体制の確立・強化を図っています。さらに、問題行動の性質や状況を分析し、学校に対して改善に向けた指導方法について助言しています。また、問題行動を繰り返し、出席停止措置を受けた児童生徒に対し、出席停止の趣旨に則り、状況に応じてセンター内の個別指導教室において指導を行うこととしています。
この間出席停止措置を受けた児童生徒はいないことから、個別指導教室の活用はありませんが、学校との緊密な連携・取組の中で、在籍校から離れた場所での指導が有効であると判断された場合、本人・保護者・学校・生活指導サポートセンター担当者が十分に話し合い、出席停止措置を行わず、学校での別室・個別指導の延長として、在籍校と連携し、センターを活用した個別指導をこれまで4名の生徒に対し、それぞれ2~4週間という期間で実施したとの報告がありました。
経験年数10年未満の教員が半数を占めるにつれ、生活指導上の問題が生じたとき、初期対応を誤り保護者も巻き込んだトラブルになることが多くなっています。
まずは情報収集と事実確認を行うこと。そして、それを早急に学年会議や職員会議で報告し、共通理解をした上で問題や課題を解決するための方針を立て具体的な方策を提示することが重要となります。さらに方策に基づいて、教員の特性と個性に応じた役割分担をし、その役割を果たすことに尽力するとともに、他の教員の役割も理解して相互に支援していかねばなりません。この「合意形成」に基づく、組織として一貫した指導体制で対応することが生活指導の基本です。そのためには教員間で生徒・保護者の状況、各学級の状態、役割分担等について、継続的に意見交換を行っていくことが必要で、互いに信頼関係のある校内体制づくりを行っていかねばならないとの報告がありました。
神戸市では、中学校区の連携から行政区全体への連携へと広げ、まさに社会総がかりでいじめ防止への意識を高め、より豊かな人間関係を構築していく中で、よりよい学校づくり、地域づくりを推進しています。
「いじめ防止小中地域会議」は、中学生、小学生の代表が保護者や地域の方々と「いじめのない明るい町づくり」について話し合い、地域ぐるみでいじめ防止を推進していく取組です。子どもたちの自主的な取組を地域に発信し、学校・家庭・地域が連携していくことで、いじめ防止に効果を発揮することが期待されています。昨年度は全中学校82校において、のべ137回の会議が開催されました。また、「こうべっ子いじめ防止広域キャンペーン」は、中学校区の小中学校の連携を軸とした「縦のつながり」を意識した「いじめ防止小中地域会議」の取組を、近隣校も連携して広げていき、さらに地域ぐるみのいじめ防止対策を推進することをねらって、「横のつながり」を意識した取組へと発展させました。より広い範囲でいじめ防止活動を、市内10地域において実施しているとの報告がありました。