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日 時:平成27年8月8日(土)
場 所:大阪私学会館【大阪市都島区網島町 6-20】
グローバル化時代が進む現在は、幼稚園から大学にかけての生徒指導を考えた時、精神論に頼る昔ながらの生徒指導だけでは対応できない状況にあり、これまでの生徒指導において今後も大切にしなければならないことや、新しい時代において必要となる指導方法について話されました。
これからの学校教育における生徒指導は、「消極的」から「積極的」へのギアチェンジだけでなく、多文化共生的思考様式の段階的充実強化と、その実践的判断・行動力の促進をめざした具体性のある教育活動へのステップアップが図られていかなくてはなりません。
また、小さな志は、大きな志により淘汰され、寛容性の弱い思考様式は、人間関係の不必要な対立事態を招きがちであることを強く自覚し、生徒指導を未来に生きる人間的知恵を育成していく包括的な教育活動として再構築していく必要があります。
我々教師が子どもと向き合い、子どもの中に何を見ているかが最も大切で、生徒指導は躍動的でドラマティックで感動的でなければなりません。そのような中、グローバル化とは、現代の子どもたちの「閉じた人間関係」や「狭い視野」をどれだけ広げていけるかということであり、我々教師の人間観や世界観が問われているということでした。
また、問題行動等の数に特化せず、子どもの事例等の報告が本研究会を通してできればというお話もいただきました。
中小の生徒指導部会を組織し、各校種の生徒指導観の違いを整理した上で、情報交換や重点指導項目の共有を行い、共通の取組を行うことで、中1ギャップを乗り越え、荒れていた学校が落ちついてきたという発表でした。また、中学校側がイニシアティブを取って会を運営していくことから、小中ではなく中小という言葉を用いているとのことでした。
問題行動等の未然防止、早期発見・早期解決のためにも定期的な会の運営の必要性を感じました。
三笠中学校では若手教員が38%をしめ、若手教員育成の観点から「メンター制度」を導入しています。若手教員(メンティー)が、各分野において指導を希望する先輩教員(メンター)に自らお願いし、面談を繰り返しながら指導力の向上をはかるOJTの取組の紹介でした。メンティーからは「相談しやすくなり、不安の解消につながる」、メンターからは「若い先生と話すことによって自分自身にも気づきがあった」などの前向きな意見が聞かれたとのことでした。
アンケートを活用し、子どものいじめについての認識と現状を調査し、その調査結果から教師がいじめを見抜く力を磨き、教師間での議論を通して学級経営の改善を図る取組が発表されました。その取組の中で、セクシャルマイノリティ(LGBTQ)として悩みを抱える生徒の実態が報告され、教員がLGBTQについて認識を高める必要性が提案されました。改めて、LGBTQについての啓発と教育の必要性を感じました。
児童生徒の不登校の要因として心の弱さを課題の1つとしてあげ、困難や危機に直面しても乗り越える力をレジリエンスと定義し、レジリエンスを効果的に育む場として部活動を位置づけ、レジリエンスを育む指導の方向性を検証する発表でした。発表の中では、中学校男子ソフトテニス部1年生10人を対象に、レジリエンスを育むことを目的とするプログラムを実施し、効果測定の結果をもとに成果と課題が報告されました。また、部活動を行っている児童生徒は、部活動を行っていない児童生徒よりもレジリエンスが高く、さらにレジリエンスが高い児童生徒ほど、学校に適応する力も強いということが示唆されていました。
平成26年度事業報告、収支決算が了承され、平成27年度事業計画、収支予算案が了承され、確定しました。
滋賀県では、モデル校として県内4校の公立中学校にスクールカウンセラー(以下SC)が常駐し、不登校やいじめ問題等に取り組んでいます。カウンセリングを行ったり、生徒指導部会・教育相談部会・特別支援教育部会等に出席したり、生徒会執行部へのピアサポート研修を実施したりしています。また、教員とティームティーチングにより心理授業を実施し、教職員研修にも積極的に取り組みながら、教職員の資質向上に努めるとともに、生徒や保護者への支援を行っています。
SC4名がローテーションを組み、1名が常駐しながら、毎日3~6時間勤務することにより、教職員との連携や生徒の行動観察が充実し、教職員とのコンサルテーションや生徒・保護者への面談等に活かされています。緊急時の教育相談体制の充実も図られていますが、SCが日によって変わるため、生徒にとって、同じSCからの支援が得られない等の課題もあるため、SC同士のよりよい連携システムの構築に努めているとの報告を受けました。
「但馬やまびこの郷」では、4泊5日の集団生活の中で、料理・制作・スポーツなど、様々な体験活動を通して不登校の子どもの心と体を元気にし、学校復帰をめざしています。異年齢の人々との関わりや集団活動の工夫などが、子どもの変化や成長なども促しています。また、兵庫県の不登校対策におけるセンター的機能も果たしています。
「神出学園」は、「自分づくり」「生き方探し」を求める子どもたちに開かれた宿泊型施設として開設され、子どもたちの元気回復の場となることを目的としています。また、子どもたちが自らの興味関心によって「自分づくり」と「生き方探し」のプログラムに挑戦するシステムになっています。
「山の学校」では、中学校を卒業した県内在住の21歳未満の男子を対象とし、学校や授業に適応しにくい子どもたちを受け入れ、生活習慣の改善を図っています。ものづくり体験などの実習を通して子どもたちの「元気・やる気・自信・笑顔」を育てる場をめざしています。
不登校・引きこもりの生徒だけではなく、生徒指導上の問題で、高校を中途退学した生徒など、希望するすべての生徒を受け入れているとのことでした。各学校とも各種体験カリキュラムが用意され、教員が、生徒と真剣に向き合っています。連携している高校との話し合いにより、最大20単位が単位認定されるなどの配慮もされています。先進的な取組を知り、改めて、不登校・引きこもり等への支援の重要性を感じました。
京都市立洛風中学校(現在生徒数56名)は、平成16年10月に、不登校を経験した生徒たちの「学び直し」、「育ち直し」の場として開校されました。
これまで不登校は、「学校に行けない子ども」あるいは「学校に行かない子ども」と捉えられてきましたが、様々な事情で「学校に行っている場合ではない子ども」という視点で見つめ直し、思春期を迎える子どもの生きにくさの実態から考えてみることを教えて頂きました。
これからの生徒指導には、違和感を受け入れる生徒理解、子どもの主体性を尊重する共感的理解が必要なことや、信頼できる出会いや環境を作っていくことの大切さを学ばせて頂きました。
京都府では、「心の教育」で醸成した「意識」を「行動」に移せる子どもの育成が必要であると考え、「法やルールに関する教育」を「行動(ふるまい)の教育」として取り組まれてきました。その2年間の成果をまとめられたハンドブックを基に、取組内容と今後の展望についての発表を聞かせて頂きました。
「人や社会とつながり、自分らしく生きることのできる社会を形成し、維持、発展を図るために必要な見方・考え方を習得し、よりよい社会の実現に向けて主体的に行動できる子どもの育成を図る」という目標を掲げて取り組まれているこの取組の指導体系や、発達の段階に応じた指導内容などを学ぶことができました。
また、ハンドブックに掲載されている教材を実際にグループで体験し、その後、この教育に対する意見交流が活発に行われました。全体を通して大変興味深い内容でした。