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日 時:平成26年8月9日(土)
場 所:京都教育大学 1号館 大講義室1他
イギリスの教育理念の歴史を交えながら、人格、価値教育・宗教教育・PSHE教育を紹介され、現在のシティズンシップ教育についての流れの内容でした。社会における価値について、小学校の早い段階から「議論」をすることを重視していることを紹介され、授業の中で、実際の生活の中で起こる疑問などを論理的、段階的に考えさせることによって、より深く自分の考えを持たせることができる。しかも、教師の仕掛け自体が明確で、教師側から理由を具体的に提示することで、常に考えの根拠を意識した発言を子どもに促すといった内容が紹介されていました。歴史、文化などの違いはあるにしても、日本の教育の中へ取り入れ方によっては、プラス・マイナス的な面もあることにもふれながら、何かの形で有効に活用できることはあるのではないかといったお話しでした。
昨年度の児童虐待対応件数は全国で7万件を超え、児童虐待は生徒指導上の重要な課題となっている中、本研究に対する参加者からの注目は大きかった。児童虐待に関して、福祉領域からではなく、学校教育領域からの意識調査について、県内の悉皆調査を実施した内容でした。
本研究の知見は、今後の生徒指導体制や機関連携の構築、教職員研修の在り方等へ多くの示唆を与えるものだと感じます。
生徒指導上の危機的な問題の解決に関して、その主体としての学校とそれを支える教育行政や専門家らの協働に関して注目が増す現状にある。本研究は私立学校における危機対応の体制構築という視点に特徴があった。公立学校とは異なり、経営母体の規模等を考慮しながらどのような体制づくりを進めていくのか、今後の研究の進展が注目される内容でした。
3つの初期指導の実践を比較検討しながら、学級機能を育てる指導のあり方を細かく分析されて、それによって導き出された指導法や考え方に基づいた実践がなされ、評価・修正のため教職員及び児童へのアンケートを取り、一定の成果が得られていました。小学校における学級機能の形成においては、初期指導が大きく影響しているということへの認識が高まった内容でした。
「生きづらさ」を抱えた生徒たちにとっては、安心で安全な教室空間の中できちんと失敗をしまたその失敗を繰り返すことが、その課題を乗り越えていくために有効であること、課題の多い学校での学級集団づくりは、面談によるゆるやかな言語教育が大きな基盤となる。さらに、在学中には、卒業後を見据えた外部機関との連携を図ることが、担任に求められている一番の支援であるといった内容でした。
平成25年度事業報告、収支決算が了承され、平成26年度事業計画、収支予算案が了承され、確定しました。
湯浅町立湯浅中学校の御前充司校長より「道徳の時間」の授業を見直し、学校全体で研究と実践に取り組んだ発表が行われました。「道徳の時間」を充実させることは、生徒の道徳性を高めるという道徳本来の目標達成に向かうだけでなく、教科の授業力の向上や生徒理解力の向上にもつながり、学級経営や生徒指導にも有効といった内容でした。今回は、湯浅中学校の研修の方法と道徳の授業に対する考え方について報告していただきました。
また、兵庫教育大学の淀澤勝治准教授より、「積極的な生徒指導」とは、子ども達の行動や言動に対して厳しく指導していくことを指しているのではなく、道徳教育が学校教育全体を通して行われなければならないこと、生徒指導においては道徳教育の観点はなくてはならないもので、教師自身に「この子は伸びる」「子どもたちはより良い人生を歩みたいはずだ」「見た目には少々問題があっても決して心からそう思っているはずはない」といったピグマリオン効果を持って接していこうとする思いがなくてはならないことなど「積極的な生徒指導」とは、そうした子どもたちの可能性を信じた教師が期待効果を持って行うことを指しているといった観点から講義をしていただきました。
滋賀県長浜市立北郷里小学校の伊部加代教頭より、開発的生徒指導の視点を取り入れた不登校対策として、子どもたちの問題行動の低年齢化が進んでいる中で、小学校の生徒指導体制を見直す必要があるとの指摘もされてきたが、具体的にどこをどのように改善すればいいのかについては十分な議論が尽くされておらず、小学校の指導体制の確立は未だに十分であるとは言えない状況にあった。小学校では6年間という長い期間で、かつ学級担任制という小学校特有の教育体制があることから、単に中学校の取組をそのまま取り入れることの難しさや、それぞれの発達段階に合わせた機動的な生徒指導体制の確立を意識することが必要なことから、組織的な体制づくりと、職員の当事者意識の醸成をポイントに小学校の生徒指導体制づくりに努めた取組についての報告が行われました。
「元気が出る生徒指導」として、成就感・達成感、お得感や一体感が必要であり、「明確で具体的な目標設定」「負担感のない実践」「客観的・主観的評価」「改善・進化」が鍵となり、機能的な校内体制づくりを構築するために、気になる子どもの把握や情報共有子どもを取り巻く環境の調整、改善(アセスメント、プランニング)などを柱にするといった内容でした。滋賀県教育委員会の廣部光保指導主事からは、スクールソーシャルワーカー(以下SSW)を活用し、ケース会議を柱とした組織的対応の取組について発表が行われました。アセスメントとプランニングを効果的に行うには課題解決に向け組織で取り組む必要があり、SSW活用事業で取り組む「ベースシート」と「支援プログラムシート」を活用し、「B−PDCAサイクル」を取り入れたケース会議の在り方についての報告でした。「SSW的視点」子どもの内面の課題だけに焦点をあてるのではなく、本人を取り巻く環境にも課題があり、その環境の調整・改善を目的とし、何よりも、ケース会議の第一歩は、「子どもの行動には必ず背景がある」といった視点を大切にしているといった内容でした。
大阪市教育委員会事務局指導部中学校教育担当生活指導グループの福山正樹指導主事から生活指導支援員の配置による学校支援体制について報告がありました。
いじめや問題行動を行う児童生徒に対する指導・対応のあり方について、関係機関と連携を図りながら段階的に指導・対応することを事例とともに示しながら、学校だけでは解決が困難な事案について、警察や少年サポートセンター、こども相談センター等の関係機関と連携した、学校への支援を行うため、平成25年度から警察官OBである支援員3名を、必要に応じ学校現場に派遣してきたが、限られた期間内での支援となるために、十分な成果が得られないという反省点があったとのことでした。今年度は、この事業を強化し、派遣の形態から、配置希望校に1名の警察官OBや児童生徒指導経験者を配置する形態に変更し、いじめ・不登校・問題行動等に対して、教職員と協働しながら経験を活かした支援を行い、配置校の教職員や支援員との相互の信頼関係づくりをもとに児童生徒への指導を行っている様子が伺え、現段階で一定の効果が見られているとの内容でした。
続いて、大阪市教育委員会事務局指導部中学校教育担当生活指導グループの厚見誠一指導主事から校内体制づくりの取組について報告がありました。
平成21年度から「不登校対策等プロジェクト」を立ち上げ、いじめや対人関係、学習環境への不適応等が不登校の要因の一つととらえ、改善方法の研究に取り組んで、平成21年度には、調査研究「学校適応への支援」として広島型プロジェクトを参考にしながら、人間関係づくりプログラムの実践(小6校・中3校)、協同学習・コミュニケーション活動・スキル教育・ピアサポート活動等に取り組んだ。調査研究を継続しながら、平成23・24年度には不登校在籍比率の高い2中学校における、予防的・開発的取組(広島型プロジェクトにおける人間関係づくりの取組)の実践と分析を行い、生徒会活動・委員会活動の活性化、教職員の協力体制の向上等に取り組んだ。平成25年度からは、研究校を1校にし、校区小学校児童を招いての見学・交流会の生徒会運営や地域と協働しての「あいさつ運動」、自主清掃活動の実施等、取組を充実させてきたという内容でした。
奈良県教育委員会事務局生徒指導支援室の中島浩一研修員から「個人別生活カード」の運用について報告がありました。過去の事案において検証の結果作成された「いじめ早期発見・早期対応マニュアル」(平成24年奈良県教育委員会)及び、「いじめ防止等のための基本的方針」(平成25年文部科学大臣決定)を参考に、個別の児童生徒ごとの記録である「個人別生活カード」の導入を県立すべての学校に行ったというものでした。
運用の結果として、「(記録を)回覧することで情報共有ができ、記録に基づいた継続的な指導ができた」「文書記録として保存しているため、申し送りが確実になった」などの成果が得られ、今後、@記録する事象の範囲(いじめに特化するがどうか)、A市町村立学校での運用方法、B適切な個人情報のとり扱いについて、引き続き検討していきたいという内容でした。
葛城市立新庄中学校の森嶋正伸教諭から、生徒による啓発番組の作成についての報告がありました。中学生に「LINE」が急速に浸透しており、友人関係が広がりに伴う問題行動の広域化や、「LINE」上の投稿が無限定に拡散することなどの問題が顕在化している中、これまで、技術部員が、防災に関する啓発番組を製作したこともあったので、「LINE」に関する啓発番組の製作を呼びかけ、部員が、校内でアンケート調査を実施するなど現状把握を行った上で、「LINEその脅威を知る」という啓発番組を完成させるといった内容でした。