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日 時:平成23年10月8日(土) 10:00〜12:00
場 所:京都市教育相談総合センター「こども相談センターパトナ」
講 演:「京都市教育委員会勤務18年(パトナ・生徒指導課)から見えてくるもの」
講師 京都教育大学 教授 桶谷 守 さん
日本における子どもの犯罪率の低さや、社会治安の良さは世界の瞠目するところであるが、これは学校(教師)の努力の賜物であると思っている。
生徒指導のあり方について、現在は問題行動への対応から、開発的・予防的な指導へとその視点を移しつつある。また、教職員全員による生徒指導の必要性が叫ばれているところである。
「生徒指導」の体制づくりからさらに一歩進めて、「学習指導」と一体化した、包括的な指導へとすすめていく必要があり、そのためにも現場の先生方が「元気のでる」ような会でありたい。
昨年度、京都市教育委員会生徒指導課長・京都市教育相談総合センター所長を退職され、現場勤務18年、京都市教育委員会勤務18年を振り返り、見えてくる様々な教育課題について、生徒指導・教育相談等の切り口からご講演いただいた。
桶谷教授が新採の保健体育教師として中学校へ赴任した頃は、威圧や力による生徒指導が必要とされた状況であった。生徒をコントロールすることで学校・学級運営をしてきたが、ひとりの生徒の不登校をきっかけに、統制だけでは学校は成立しない、子どもの心を扱う必要性があると強く感じ、河合隼雄先生の講座に通った。これを機に自分自身の生徒指導観は大きく変化し、子どもたちを「社会的な存在」としてとらえ、不登校や問題行動に対して科学的知見の裏づけを持つことの必要性を感じた。
学校は、様々な問題を抱えており、その学校や子どもたちを取り巻く社会環境も大きく変化している。平成9年以降、子どもが加害者となる「動機不可解」な事件が多発している。子どもたちの生活環境も大きく変化し、生まれながらにして便利で快適な環境で育っている。しかし、便利さと引き換えに、昔の子どもたちが家庭で体験してきた「我慢する」「空気を読む」といったことができなくなっている。気持ちを扱う機会を、学校が提供していく必要が生まれてきている。
人間関係やコミュニケーションに関する問題が、子どもたちの抱える課題の中心であり、煩わしさや曖昧さもある中で諦めず関係を紡いでいくことを、子どもたちは簡単に投げ出してしまう。その耐性のなさや、大人社会の反映としての発達のゆがみなどが、子どもたちを生きづらくさせていると考えられる。
学校においては、学級という集団のなかで一人ひとりを育てることが大事であり、その基盤として学級集団が集団として機能していることが前提となる。諸先輩から受け継がれてきた教育の基本、言い古された指導の極意について、今一度見直して見ることが必要である。伝統的な生徒指導にうたわれる「三つのC(=consistence, compliance, care )」をとらえなおし、ともすれば教育相談的なかかわり方を「指導」とすり替えてしまっている状況を再認識することも必要である。「相談」と「指導」は分けて考えるべきものである。
子どもや親を取り巻く社会において、いわゆる「世間」という概念が消失しつつある。「誰にも迷惑をかけないからいいじゃないか」という言葉には、身内以外の人は赤の他人であり、極言すれば「人としての存在」でもないという意味合いが感じられる。規範意識の醸成には、この「世間」という感覚を身につけさせることが必要だと考える。
学校の役割は「教える」だけではない。子どもや親を支え、子ども同士、親同士、ときには子どもと親をつなぐ役割もある。さらに教師と子ども、教師と保護者がうまく繋がれば、多くの課題の解決への道筋が見えるのではないだろうか。
日 時:平成23年12月10日(土) 10:00〜12:00
場 所:大阪府私学文化教育会館4F 蘭の間
講 演:NPO法人TPC教育サポートセンター代表 弁護士 峯本 耕治 さん
事例報告:大阪市スクールソーシャルワーカー
生徒指導学会は、現場に役に立つ団体でなけれならない、また、不幸な事件が起きても、それをきっかけにし、不幸な事件として終わらせない、子どもたちのためによりよい対策を進めてきている。
児童虐待について、全国でも先進的な大阪府、市の取組を聞いていただき、明日からの業務に生かしていただきたい。
児童虐待の早期発見と防止のため、虐待問題の現状を理解し、重大事件の未然防止及び子どもの成長・発達の保障の視点から、学校・教職員の役割や虐待の背景にある家庭や保護者への対応のポイントなど、学校が虐待防止に取り組むにあたっての大切な視点について講演いただいた。
子どもの愛情問題・愛着障害(愛情・愛着環境・安心環境の崩れ、居場所の喪失)が、子どもの発達に大きな問題を起こし、教師にとって扱いにくい問題行動として現れている。
子どもの問題行動は、愛情欲求の裏返し、試し行動、居場所探し、孤立感や寂しさ、社会的自立を困難にする発達課題、不安、しんどい環境への適応症状と負の学びの表現であり、自尊感情・自己肯定感の低さ、基本的信頼感の低さから来ている。
子どもへの問題行動等へのプランニングは、学校における愛着環境をいかにして確保するか、発達課題への対応、発達保障、しつけをどのように行うか、家庭環境の改善、調整のために学校に何ができるか、自立のための教育、支援をどのように行うかがポイントとなる。
保護者の現状を、20年前と比較すると、「頼る人がいない」「相談できる人がいない」など孤立感を抱えた親が2倍、イライラ感を抱えた親が3倍となっており、強まる孤立と子育て不安が、虐待の背景となっている。
これらの視点を教師が持つことで、客観的に子どもの問題行動をとらえることができ、校内チーム対応でのアプローチの仕方が見え、関係機関との効果的な連携にもつながる。
大阪市教育委員会における児童虐待への対策や実践事例を報告いただいた。
平成16年度に起きた、小学生の死亡事案を切っ掛けに、児童虐待防止支援委員会を設置し、教職員の手引きを作成した。また、平成21年度に起きた、小学生の死亡事案を受け、検証・提言・研修を行い、教師を対象とした虐待相談窓口を設置した。
虐待事案のほとんどのケースが一時保護とならず、学校での対応となるため、学校現場を支える相談体制での連携が重要となっている。