日 時:平成22年10月2日(土) 10:00〜12:00
場 所:京都市教育相談総合センター「こども相談センターパトナ」
講 師:京都教育大学 本間 友巳 教授
テーマ:「学校におけるスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとの有効な連携について」
30年ぶりに生徒指導提要が改訂され、これからの生徒指導の基本書となりますが、いかにして教員に共有してもらうか、これからの研修体制やプログラムをどうするかが課題です。また、生徒指導は、学習指導と一体となって考えていかなければならないことであり、教員全体で取り組むべきことです。本日出席された方々には元気をつけていただき、明日からの糧になればと考えています。
人々の価値が公的なものから私的なものに変わってくるとともに、個人のこころが重視され(社会の心理学化)、学教育も集団から個へ向かっていった。そんな中、不登校への対応やいじめ自殺事件等をきっかけに、1995年からSCが導入された。職務としては、子どもへのカウンセリング、教職員へのコンサルテーション、保護者への援助に加え、将来的には教職員のメンタルヘルスにも関わるのではないか。
有能なSCは左側を中心に右側に広げられ、有能なSSWは右側を中心に左側へ広げられる。
SCは当事者の私的(心理的)世界の理解と支援を担い、SSWは社会的(生活的)文脈からみた当事者と当事者が抱える問題の理解と支援を担う。
SCの直接支援による見立てとSSWの関係者をまとめながら支援していく方法の両 方で対応していくことが理想的な形であろう。SCとSSWの連携のキーパーソンは、学校の中心プレーヤーである教員になる。
ただし、今後、学校の中では複雑な親や子ども、社会のニーズに対応するため、専門化を進めざるをえないが、分業化することは避けたほうがよい。あくまでも、教師が中心となって、SCやSSWを学校システムの中に含めていくことが必要である。
また、教師自身もSCやSSWの専門性を学び、包括的に取り入れていくことが大切である。そして、効果的な連携をおこなっていくためには、@コーディネータ教員の重要性、A管理職の理解、B関係者会議への参加、C生徒指導・教育相談体制の見直しや改善といったことがポイントになる。
日 時:平成22年12月4日(土) 10:00〜12:00
場 所:兵庫県私学会館 大ホール
講 師:関西学院大学 横山 利弘 教授
テーマ:「生徒指導と心の教育」
「生徒指導提要」では理論編と実践編に分かれていますが、特に小学校の生徒指導を充実させていくことが大切です。また、問題対応に終始してしまいがちですが、もっと根底的なところから考える必要があります。すでに犯罪領域では、市民が自らを守り、自分たちの街をつくっていくという方向が出ています。学校でも子どもたち自身が自らの学習環境や生活環境を良くしていくという視点が必要です。今後は社会的リテラシーを身に付けることが生徒指導の大きな目標になるでしょうし、すべての教員が生徒指導に関わり、地域の力も借りながら進めて行くことが重要になります。
教員は、子どもがよくなると自分のことのように喜び、問題行動を起こすと自分のことのように苦しむ。そこに現場実践者としての誇りがある。学会活動では、それぞれが自分のテリトリーにこだわる傾向があり、どこかにちがいを見つけようとするが、それでは本質が見えなくなることがある。一体化して考えていくことが大切である。
「心はどこにありますか?」、言語としては、どこの国でも心臓を表す言葉と同じものからスタートしている。心が動いている間は、人間として生きているという暗黙の解釈がある。
「心は見えますか?」、見える部分と見えない部分があるが、授業中の子どもの様子から見えることはよくある。しかし、教育実践において、「心を見る」ということをどれほど重視しているだろうか。例えば、授業中居眠りしたりやる気のない態度をとったりしている生徒がいた場合、我々は、「起きなさい」、「しゃんとしなさい」といった「行動の指導」をよくする。しかし、「この子は今どう思っているのだろうか」と心の中を想像してみると、言葉かけが変わってくる。絆という糸が切れ掛かっている状態なのだから、引っ張らずに近づいていかないといけない。また、職員室のそばに子どもが来ている時は、何か問題を抱えていると想像し、対応に神経を使わないといけない。心はある程度見えるけれど、本当のところは見えない。見えない部分は、信じる以外しかたない。「どんな子でも、よりよくなりたいという願いをもっている」ということを信じるのである。
今、子どもたちは、「行動や言葉」と心の間にバリアーを張っているため、行動の指導や説諭が通じない。人間は、自分の規範の幅で人のことをとやかく言うが、人からとやかく言われることが大嫌いである。今の子どもたちは心を外に出さないため、鬱憤ばかりが腹の中に溜まり、突然爆発する。こどもたちにとって最も神経を使うことは、グループから放り出されないこと、孤立しないことである。孤独は人間を育てるけれども、孤立は人間を狂わせる。
世の中に共通の規範がある時はそれに従っていればよかったが、価値観の多様化によって共通 の規範が失われた今、対話をすることが必要になってきている。しかし、その対話が難しい。
尖っている子どもを元にもどすには、情の部分が問題なのだから知的に言って聞かせてもだめ。 愛情をもって接する以外ない。自然の愛も大切で、特に海に行くと癒される。また、小さな子と出会うことも情を柔らかくする。
3年目を迎えました本研究会は、多くの方々の協力を得まして、第3回大会及び2回の「元気の出るセミナー」を無事実施することができました。大会テーマ「つながる生徒指導」の言葉どおり、これからも皆さんとのつながりを大切にしていきたいと思います。よろしくお願いします。 文責:岩井達之(和歌山県教育委員会)