こども相談センターパトナ
日本生徒指導学会関西地区研究会の平成21年度の活動は、「 元気の出るセミナー」として年間3回開催することとなりました。その第1回目の報告をさせていただきます。
森田洋司会長
私たちの日本生徒指導学会関西地区研究会は、昨年の8月に発足し、ちょうど1年となります。本研究会は、日頃ご苦労願っている現場の生徒指導担当の先生方にお役に立てないかと、現場の先生方と行政と私たち専門家の三者があい寄ってセミナーを発足させたところです。
第1回セミナーでは「発達障害の視点からみた生徒指導」として皆さんに学んで頂きたいと考えております。とりわけ特別支援と生徒指導をどのようにリンクさせていくのか。更 に、個 別支援と集団をどのように導入し、リンクさせていくのかなどが課題となっています。また、「個」と「集団」との関わりも課題であり、大きな関心となっているところであります。今後も、現場の先生のための生徒指導に関する研究と実践活動を行い、関西地区における生徒指導の一層の充実と発展に資していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
発達障害のある子どもをとらえる視点として、子どものおかれている背景や発達段階を十分にとらえて学級集団の中で指導することが大切です。例えば、小学校低学年では、愛情を十分に受ける事によって自尊感情が育まれています。この段階で該当の子どもたちだけをほめていくと、他の子どもたちが、愛情をもらえていないと感じて自尊感情が育ちません。
発達障害のある子どもだけに焦点を当てるのではなく、子どもたちの学齢に沿った発達段階を理解し、その特徴に応じて、子どもたちの指導を行うことにより学級集団も育ち、個々の子どもたちも育っていくのです。
先生方の「教師の困り感」で考えるのではなく、「 子どもたちの困り感」を考えていくことが支援の核となります。
例えば、雰囲気が読めなかったり指示が聞けない困り感を持つ子どもに向かって、「 雰囲気を読みなさい」と先生が困っている事を指摘しても改善しません。子どもの困り感に対応して指導することが重要です。具体的には、「 今から怒るよ」といって先生のモードが変わったことを伝えたり、あえて小さな声で話して注目を引くなどが考えられます。対応を考えるときには、子どもが何に困っているのかを見立てて、それに対応した指導を行ってください。
熱気あふれる会場
困り感を理解するためには、ADHD、高機能自閉症、アスペルガー、LDなどの発達障害のそれぞれの特性(困り感)を理解し、効果的な対応を学んでおくことが有効です。
例えば、アスペルガー症候群であれば、「 文字通りに解釈する」「 冗談が通じない」といった困り感があります。先生が軽い気持ちで冗談を言った事を何年も恨んでいるといった事が起こります。このような場合は、「 今から冗談を言うよ」という事を伝えておくことが必要です。伝えておかないとパニックになります。同様な傾向を示す保護者に対しても事前に「今から、お子さんのことを優先して話すので、お母さんには失礼な事も話すかもしれませんので申し訳ありません。」 等と事前に断っておくことが必要です。また、子どもへの指導をする場合には、何のためにそれをするのかを伝えておくと効果があります。「 さわるな!」は通じにくいのですが、「 熱くて火傷をするのでさわらないで!」なら通じるのです。( その後、様々な困り感と対応方法について教えていただきました。)
「心ポカポカ」といった抽象的な目標ではなく、「 みんなに声をかけて遊ぼう」といった具体的な目標を立てて、どの子にとっても居場所のある学級づくりを行ってください。特に分かる授業を工夫することが必要です。そのためには、厳しい言い方ですが、先生方が常に自己評価を行い改善していってください。
京都は、西陣織など〔良い作り手〕がいます。「 〔 良い作り手〕は、〔 良い使い手〕に育てられる」と言われます。子どもたちを〔使い手〕と考えて、この子どもたちに何をしたら良いか考えることで、私たち教師も〔良い作り手〕になっていきたいと考えています。