会長挨拶
昨年8月、発足大会が盛大に開催され、その後、ニューズレターやホームページの充実、研究会ブログの立ち上げなどの活動を行なってまいりました。そして、平成20年度、最後の取組みとして、平成21年3月20日(金)、大阪樟蔭女子大学小阪キャンパスにおいて、第2回大会を開催いたしました。大会テーマを発足大会に続き「元気の出る生徒指導 第二弾 −情報社会を豊かに生きるために−」とし、さらに、フォーラム、自由発表、5つの分科会と、盛りだくさんな内容で159名の参加を得て実施することができました。ニューズレター第2号では、第2回大会の報告と今後の計画や取組等についてお知らせいたします。
会長挨拶
本研究会の森田洋司会長(大阪樟蔭女子大学学長)から挨拶がありました。第2回大会は、関西地区研究会の一番の願いである「元気の出る生徒指導」のために、多くの関係者たちが知恵を出し合って手作りで作り上げてきたこと、また、第1回大会では生徒指導全般にわたる内容を取り上げたのに対して、第2回大会ではテーマを「情報社会を豊かに生きるために」に絞り込んで各分科会で研究を進めることにしている等の話がありました。
フォーラム風景
全体会では、「ケータイ、ネットと生徒指導〜ネット上のいじめ・誹謗中傷、トラブル等から考える〜」をテーマとしたフォーラムを、関西大学総合情報学部の岡田朋之教授をコーディネーターとして実施しました。今、生徒指導上の大きな課題であるケータイ・ネット問題に、ケータイや少年補導の専門家、学校現場から意見をいただけるよう、遊橋裕泰氏(モバイル社会研究所主任研究員)、野沢征子氏(元大阪府警察本部少年補導職員)、竹下正明氏(神戸市立兵庫中学校校長)、妻木靖朗氏(大阪府立貝塚高等学校教諭)をパネラーとしてお迎えし、ケータイの利便性やネットワーク効果だけではなく、コミュニケーション力やアサーション力の育成、平素の子どもたちとの関わり、親子のコミュニケーションなどの人間関係、情報機器の使い方、情報を正しく扱う教育などが大切であるとの意見が出されました。
第1会場
第2会場
第2回大会では、研究会であることから、自由発表も募集しました。結果、教育委員会や学校現場から研究・実践報告など4本の応募があり、2会場に分かれて行われました。昼食時を活用しての発表でしたが、両会場とも多くの参加者で埋まりました。
第1会場は、和歌山大学の松浦義満教授を座長として、東近江市教育委員会学校教育課 北崎裕章指導主事による「ケータイ・インターネットの問題への対応、自分よし・相手よし・社会よし「三方よし」ですすめる生徒指導」、大阪市立西淀中学校 嶋田博教諭、大阪市立瓜破中学校 笠谷和弘教諭による「ゼロトレランス方式の導入に向けて(小中学校・学級担任の意識調査)」の2本の発表がありました。
第2会場は、大阪女子短期大学住本克彦教授を座長とし、京都府舞鶴市立城北中学校中川靖彦教諭による「社会に生きる力を育てる運動部活動の教育的価値に関する研究(中学生、社会人、教師に対する質問紙調査から)」、大阪府和泉市立鶴山台北小学校辻真一教諭による「現任校における生徒指導の現状と課題」の2本でした。
午後の分科会では、5つの分科会に分かれて研究協議が進められました。
第1分科会
第1分科会は、「 e -ネット安心講座」として、株式会社日本IBMの尾崎健二氏による発表が行われました。ネットの利用には、判断力や自制力、責任力が必要であり、愛情の反対語は「無関心」であるというマザーテレサのことばを引用しながら、親が子どもをしっかり見守り、指導し、責任をとる覚悟が必要であると主張されました。参加者からも、危険なことを含めネット教育を行っていく必要性があることや、家庭ではケータイの使用について「我が家のルール」を作る等、話し合うことが大切であるとの意見が出されました。
第2分科会
第2分科会は、「ケータイに向き合うためのルール&マナー講座」として、NTTドコモ関西支社の鳥羽浩子氏を講師として、子どもにケータイをもたせるにあたって、チェーンメールや、プロフ、なりすましメールサイト等メールやインターネットを通じた電話によるトラブルの実態や対策、携帯電話の安心・安全な使い方、ルールとマナーについて学びました。また、2人1組で「親役」と「子ども役」になってケータイについてやり取りを行うワークショップが行われました。
第3分科会
第3分科会は、「学校におけるリスクマネジメント」をテーマとして、大阪府弁護士会所属の峯本耕治弁護士による講演が行われました。リスクマネジメントは、場当たり的な対処法ではなく、アセスメント(見立て)・プランニング(作戦を立てること)が不可欠であり、問題の原因を見立て、総合的に作戦を立てることで、子どもの最善の利益と保護者との関係を守ることができる。アセスメントができると、精神的に余裕を持って対応することが可能になり、何らかの対応プランが必ず出てくる。さらに、チームで対応することの大切さも指摘されました。
第4分科会
第4分科会は、「学校非公式サイト(学校裏サイト)の現状と対策」をテーマとして、文教大学情報学部情報システム学科の池辺正典講師とMCTP渉外担当委員会の上田多一郎委員長による発表が行われました。ネットトラブル経験は、小学校・中学校・高校の順で増加の傾向があることや、裏サイトにおいて問題となる「誹謗中傷」関連の話題は、中学校において最も比率が高いこと等の傾向分析が発表されました。また、MCTPの具体的な活動内容について説明と、文部科学省の調査及び裏サイトに関連した事件の記事をもとに現状分析の発表がありました。
第5分科会
第5分科会は、学校現場からの実践報告でした。京都府長岡京市長岡第二中学校の密谷由紀教諭からは「ネット上のいじめ への対応」をテーマとする発表が行われました。また、奈良県大和郡山市立郡山東中学校の渋谷美奈教諭からは「ネット上のいじめをテーマとして、生徒会による演劇を通した取組」の発表が行われました。参加者からは、インターネット上に流れた情報の消去の難しさや、情報が世界に発信されているという事実を子どもたちが認識していないことや、啓発について保護者も教師も参加する事などが大事であるなどの意見が出されました。
役員、各分科会発表者など約100人が参加して開催されました。各府県の取組に関して情報交換が活発になされ、研究者、行政、教育現場の交流がさらに進みました。
*現在、関西地区研究会会員募集中です。
ニューズレターの発行が遅くなり申し訳ありません。本研究会は、初年度でもあり、五里霧中でしたが、年間を通じて「元気の出る生徒指導」をテーマに活動してまいりました。今回は、専門的な立場や、現場で活躍されている先生方からの報告をいただき、会場からも様々な指導法が見つかった、新たな課題が見えてきたなどの声が寄せられました。ニューズレターで、どこまで会場の熱気をお伝えできたかわかりませんが、編集作業を通して、私自身も多くの皆さんから元気をいただきました。ありがとうございました。
文責:山本博章(堺市教育委員会)